コマメディア 〜史上最弱の仏弟子コマメ〜

おもに雑誌、書籍で活動する紙系ライター森竹ひろこ(コマメ)が、仏教&瞑想関連の話題を広く紹介。なにかがきっかけで、仏教とご縁がつながると嬉しいです。……最弱なのでおてやわらかに!

【報告】田口ランディさんの「サンガくらぶ 幸福に生きるための倫理とは?」を聴講しました

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2018年11月2日(金)、作家・田口ランディさんの「第53回サンガくらぶ 幸福に生きるための倫理とは?〜オウム死刑囚の大量処刑を機に私たちの信じているシステムをほどいてみる〜」を聴講した。

 

会場の人間禅澤木道場には、スコットランドから帰国して日が浅いランディさんの話を聞こうと、100人をこえる参加者が集った。

その90パーセント以上が女性!男性参加者の割合の多いサンガくらぶとしては異例なことだ。

前に置かれたテーブルには、ランディさん手作りのロウソクや花がアレンジされ、会場の緊張感を和らげていた。

 

一部 執行

 「最初にシビアな話をさせてもらいます」と、14年にわたり交流を続け、執行の直前まで面会を続けてきた元死刑囚の林泰男さん(地下鉄サリン事件実行犯)の話から始まった。

 

ここでは、2通の林さんからの手紙の一部が紹介された。

1通は、7月3日金曜日に麻原彰晃らの執行が行われた直後に、林さんが書いた手紙だ。

ランディさんが大切にビニール袋から取り出した手紙は、厚い束に見えた。

これは、休み開けの月曜日には、刑が執行されることを覚悟して書かれたもの。

自分の生の時間をカウントダウンするかのように、時系列に出来事や思いを綴り続ける長い長い手紙だった。

 

実際の執行は、翌々週の7月26日に行われた。

 

紹介されたもう1通は、執行の前日に書かれたもの。

ランディさんのもとに配達されたのは、執行の翌日だった。

執行は本人には当日朝に告げられるため、これを書いているときは知らずに書かれた。

しかし、ランディさんは言う。

「人は本能的に、自分がいつ死ぬかわかっているのではないでしょうか」と。

2通目の手紙は、最初の手紙より“張り詰めた透明感”に満ちていることを指摘され、その最後の手紙の一部を読み上げた。

 

林さんが、最後まで誰も非難することも、自分を弁護することもなく、被害者の方々へ心を砕き、自分の心を見つめ続けたことに胸がつまった。

 

わずかひと月で13人が処刑される異常な事態に、ランディさんは衝撃を受けた。

日本の死刑制度、第三者のバッシング……様々な苦悩をかかえ、執行後は日本社会にいることも、息をすることも苦しくなったそうだ。

「もう、二度と林さんやオウムの話はしないだろう。自分とは切り離して生きていきたいと考えていました」

 

そして縁に導かれるように、スコットランドのエコ・ヴィレッジ「フィンドホーン」へと旅立った。

 

 

二部 フィンドホーンへ

 

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ランディさんは20年以上前から、フィンドホーンはスピリチャルの聖地として知っていたが、妖精好きの集まるフワフワとした場所というイメージで、自分が行くという発想はなかったそうだ。

 

でも、実際に行くと全くイメージが違い、「とっても地に足のついた場所」だった。

 フィンドホーンではコミニュティの一員として働くことががルール。皿洗い、床掃除、ガーデニング、ベッドメイキング、農作業…ものすごく働かされた。

 

これがランディさんにとって、とてもよかったそうだ。

何百枚の皿を洗い、何百個の卵を割るなかで、日本では仕事に追われて、生活をしていなかった自分が根底からくつがえされた。

 

 

さらに、フィンドホーンには14の律(ガイドライン)があり、ランディさんが翻訳をしたものが配られた。

そこには、他人を尊重するとともに自分も大切にすること。自分のことば、考え、ふるまいに責任を持つことなど、コミュニティの土台となる思想が掲げられていた。

 

ガイドラインに書いていることは、みんな知っていること、どこかで読んだことのあることです。でも、みんなわかったつもりになっているけど実行していない。実行しなくてもこの国では生きていける。でも、私は苦しくなってしまった」

 

ところが、フィンドホーンで本当に実行している人たちに出会い、ビックリしたそうだ。

例えば、誰かにイラッとしたり、ムカッとした時は、自分の内面を反映しているのかもしれない。だから相手を怒ったり、言い返したりするのではなく、まずは自分の内面を観察していく。

 

特に、自分の感情、ふるまい、行動に責任を持つことが重視され、ランディさんは「私たち」を主語に話して、何度も注意されたそうだ。

「ここにグル(教祖)がいたら、このコミュニティは実現しなかった。オウムは教祖にゆだねてしまった。実は自分をゆだねないって、すごく難しい」

 

そうして6週間ほどの滞在後、元気になって日本に帰ってこられた。

「人の良心的な意識でつくられたコクーン(繭)のような空間に守られて、安心できた。もう一度、人に対する信頼感が取り戻せて、今日お話をしています。日本に帰ったら、同じようなことを実行してみたい」

 

 今も自分の中心に怒りはあるけど、(それに取り込まれず)気づいていられるまでに戻れたそうだ。

「今起きていることをみつめて、自分のいいと思うことを実践して、それを人に伝えていく。実践することによって自分が気持ちよくなる、それが体験できました」

そう言われるランディさんは、コクーンから羽化したばかりの、みずみずしい蝶のように見えた。

 

 ※このレポートは部分的にまとめたものです。今回の講義をもとにした記事が、12月発売予定の「サンガジャパン31号」に掲載されます。拙い私のレポートでは伝えきれないことも多く、ぜひそちらをお読みください。

 

(個人的メモ)

編集Kさんから、ランディさんのフィンドホーンの話を聞いて、私のフランスのプラムヴィレッジの話とすごく共通していることを指摘された。

プラムヴィレッジでは瞑想を中心におきながらも、すごく働いた。英国のアマラーワティー僧院でも瞑想修行のつもりで滞在したが、予想以上に働く時間が多かった。

労働は健全なスピリチュアル性、宗教性のキーワードのひとつなのだろうか。

 

フィンドホーンでは、瞑想がさまざまな形で日々の生活に取り入れられている。自己の内面を見つめながら精神性を高めることに意識を向け、共に場をつくっていく『Co-creative(協創)』を、世界中から集まってきた人々と実践しているそうだ。

その思想や、瞑想などの具体的実践法を、さらに詳しく知りたい。

 

今回のお話は、英国アマラーワティー僧院長のアチャン・アマロー師の「サンクチュアリ」の教えから得た、私の活動の指針「サンクチュアリとしての場をつくる、そのためにまず私自身がサンクチュアリになる」と繋がることも多く、勇気づけられた。このタイミングで聞けてよかった。