9月8,9日、鎌倉・建長寺で開催されたマインドフルネスの国際フォーラム「Zen2.0」に取材を兼ねて参加しました。
(こちらは備忘録的なもので、文章も内容も荒いですがシェアさせていただいきます。詳細なレポートは、来年2月発売予定の『別冊サンガジャパン』に掲載予定です)
建長寺の山門を入ると、紫のお揃いのTシャツを着たスタッフがあちこちに立ち、笑顔で挨拶をして、会場案内をしてくれました。
鎌倉五山第一位の格式高い禅寺・建長寺も、この日はちょっと柔らかな空気が漂っているようです。
・オープニングセレモニー1(ご挨拶、読経)
オープニング・セレモニーが行なわれる方丈(龍王殿)は、開始の9時半には数百人の参加者で埋まっていました。
建長寺管長の吉田正道老師のご挨拶と、参加者全員による般若心経の読経でスタート。数百人で唱える般若心経が、一つのうねりとなって広い方丈に響きます。
・オープニングセレモニー2(パネルディスカッション)
パネルディスカッションは、禅僧の藤田一照さんと、翻訳家の島田啓介さん、そして一般社団法人Zen2.0の共同代表の一人、三木康司さんが登壇しました。
まずは、自己紹介。
三木さんは、リストラをきっかけに精神的なバランスを崩した時期を坐禅で救われ、その経験がZen2.0へと繋がったことを笑顔で語られました。
藤田さんは、東京大学で心理学を研究されていましたが、そこには体への観点が欠落していることに疑問をもたれ、縁あって鎌倉・円覚寺で坐禅を体験することで、禅僧となり、「一人称の私を、修行によって探求する参究の道」へ進まれることに。
島田さんは、1995年の来日でティク・ナット・ハンが鎌倉に来られたとき、病気あけでスタッフをしていて疲れた体を、藤田さんがストレッチで癒してくれた思い出を語られました。
ここで、各自が気持ちのよいと感じるやり方で体ほぐしタイム。
心身がゆるんだところで、さらにトークは今年のZen2.0のテーマ「感じる身体 実践する心」に踏み込みます。
自称「話しが止まらない病」の藤田さんと島田さん。トークは大いに盛り上がりましたが、なかでも藤田さんの「このテーマは身体と心を二元的にとらえてないか」という、根本的な問いかけが印象に残りました。
身体という言葉は明治時代のbodyの翻訳であり、今では(体と心が別のものだということは:ライター加筆)一見常識になっているが、本当にそうなのだろうか。常識のパラダイムを「そこに問題はないか?」と再吟味することを提起されました。
今年のZen2.0はテーマにそって、実践のあるプログラムが多く組まれています。藤田さんの言葉を、この2日間を通した「問い」と受けとめた参加者もいたことでしょう。
この後は、建長寺境内の方丈をはじめ、大庫裡の大広間や応供堂などで行なわれる多彩なプログラムを、参加者は自由に受講できるシステムになっています。(定員制や、整理券の必要なものあり。翌日は隣接する鎌倉学園も会場に使用)
・プログラム「すべてと和解するマインドフルネス」島田啓介
登壇者は、世界的マインドフルネスムーブメントの父といわれる禅僧ティク・ナット・ハンの翻訳者であり、長年のマインドフルネス・ファシリテーターの島田啓介さんです。
「我々はつねに、いいもの心地よいものを欲しい、いやなもの心地悪いものはいらないと思っています。でも、現実はえり好みはできない。今ここで起こっていることを、ありのままに受け入れた時、楽になっていくのです。それで、タイトルに『和解』とつけてみました」
「和解は『和らいで解ける』と書きます。ここのような安全な場所で、本当の生命力を発せられる体験をしてもらいたいです」
私は取材の関係で、冒頭のトークで席を立ちましたが、参加者によると、みんなで歌ったプラムヴィレッジソング「呼吸の歌」は感動的なハーモニーとなったそう。
また、初お披露目の、ペアになって互いの手を重ねて呼吸を合わせるワークも、インタービーイング(相互依存=縁起)を体感できて、とてもよかったそうです。
・プログラム「禅と人工知能」 三宅陽一郎
途中からですが、ゲーム開発者で、デジタルゲームにおける人工知能を専門とされる三宅陽一郎さんの講義に参加しました。
「仏教の知見は、現在の人工知能には入っていない。そこを繋ぎたい」
と言われる三宅さんは、仏教の心理学的な見解のなかでも唯識をベースに、末耶識(自我意識)、阿頼耶識(無意識、深層心理)などの言葉を使い話を進められていました。
「人間は時間とともに生きている。自分の人生という物語を過去から作り出して、未来に通じていきます。
人間にはコンテキストを作る能力(物語を作る能力)があるが、人工知能には今この瞬間の自分しかなく、コンテキストがない。ここが根本的な違い。
でも、そのような人口知能を作るのが、今の自分の研究です」
講義は期待をはるかに越えた面白さ!無意識の領域と触れ合い続ける瞑想実践者としても首肯くところが多く、刺激されました。
同時間帯に開催された、島田さんと三宅さんのプログラム。
島田さんの参加者はユルユルとくつろいで、瞑想中には気持ちよさそうに寝ていた人(このプログラムは寝てもOK)もあちこちにいたのに対して、三宅さんの参加者はノートPC持参で熱心に記録をとる人も多く、好対照でした。
どちらもありのところが、Zen2.0の懐の深いところでしょうか。
・プログラム「境内を歩く瞑想」島田啓介
境内を、普段歩く時とはモードを変えて、呼吸に気づき、一歩一歩を感じながら、列になって歩きました。
風が心地よく、青空が広がります。
折り返し地点の竹林では、「随竹瞑想」をしました。
自分の気になる竹を1本見つけて、挨拶をして、寄り添い耳を当てて音を聞きます。
竹に耳を当てるとひんやりと気持ちよく、ザッーと水が流れるような音が聞こえてきました。
これは、竹が大地から水を吸い上げる音や、笹の葉が揺れる音だそう。
『竹も生きているんだ!」
命の躍動を、ダイレクトに感じました。
・プログラム「瞑想舞」香織
歩く瞑想で会場に到着後、最後の10分ほどですが瞑想舞を見学しました。
講師は天と地を結ぶ「祈りの舞」として、全国の寺社仏閣で舞を奉納されている香織さん。
幻想的な音楽を聞きながら、光の玉を体に降ろしていくようなレクチャーをされていました。イメージ系の瞑想ですね。
終了後、参加者のお顔が和らいでいたのが印象的でした。
そのうち、 2日目に(たぶん)続きます。