2月24日から1ヶ月にわたって、浜松市内の28の寺社で、「神社・寺カフェ」イベント(主催 NPO法人「楽舎」、後援 浜松市)が開催されます。
この期間は誰でも気軽に仏教や神道に触れられるように寺社が一般解放。坐禅や、念仏、密教瞑想、神道入門講座、住職とのよろず相談など、それぞれ寺社独自の企画が体験できます。
※開放日や、企画の開催日は寺社ごとに違いますので、チラシで確認ください。
チラシPDF↓
http://raksha.jp.net/jinja-tera-cafe/jinjyateracafe2017.pdf
主催のNPO法人「楽舎」の代表は、浜松市在住のフリー編集者の池谷啓さん。仏教書も多くてがけ、日本仏教だけでなく、スマナサーラ長老の書籍の企画・編集にも初期の頃から関わり続けています。共通の友人知人も多く、私にとって大先輩といえる方です。
イベントのチラシには、開催に向けた思いが綴られています。(太字は原文のままです)
ほんらい神社やお寺は、文化と伝統が息づいて、人と人をつなげるコミュニティの場でした。境内には豊かな自然、建物には歴史を刻んだ伝統の力が脈動しています。その底流には、こころの教えがあり、培ってきた修行の息吹があったことでしょう。
しかし現状は、残念ながらそうなっていません。いまのままではもったいない。もっと開かれた空間であってほしい。地域の拠り処、心の癒やしの場になってほしい。このままではもったいない。そんな思いから、この企画がうかびました。
カフェとは、寄り集まって自由に語りあう場という意味あいです。教えを知りたい。お経や坐禅、念仏、唱題行など体験してみたい。生き方のこと、先祖供養や終活の話も聞きたい。ただゆったりと雰囲気を味わいたい。いろいろな方がおられると思います。この機会に、神社やお寺を訪ねて、神主やお坊さんとの語らいを楽しんでもらい、ひとつの<きっかけ>づくりにしていただければと思います。
今、仏教瞑想から宗教色を排したマインドフルネスが注目されていますが、私は逆にマインドフルネスを通して、気軽に仏教に親しむワークショップができないかと考えていたので、池谷さんの活動にはとても共感をおぼえました。
上座仏教やティク・ナット・ハンから、メンタルヘルス系までワークを広く紹介しつつ、仏教の実践と教えにふれる機会がつくれたら…
そんな考えを池谷さんに伝えたところ、 2月19日に浜松市内の鴨江アートセンターで行なわれるプレイベントで、「マインドフルネスと仏教」についてお話をする機会をいただきました。
■「神社・寺カフェ」プレイベントの報告
鴨江アートセンターは、昭和3年(1928年)に警察庁舎として建設された、歴史的な洋風建築。一時は解体の方針が出ましたが、市民の保存運動による、現在はリノベーションされて、ジャンルを越えたアーティストやクリエーターの活動の場になっています。
プレイベントは高い天井を持つ大ホールで行なわれ、50人ほどが参加されました。
プレイベント第一部
第一部は、池谷さんが参加する28の寺社をスライドとともに解説。これだけの規模の宗教や宗派をこえたイベントを実現させるのは、困難なことだったと思います。
一つ一つの寺社を、歴史や現在の活動、住職や家族のエピソードなどを交えながら紹介する池谷さんの姿から、ていねいに信頼関係を築いて、実現できたことがうかがえました。
プレイベント第二部
・住職編
第二部は。まずは参加する寺院の3人の僧侶が、お話や実演をされました。
日本山妙法寺・浜松道場の市川隆子住職は、明朗に「南無妙法蓮華経」のお題目を唱え、世界平和の運動に邁進される思いを語られました。当日は団扇太鼓を叩いて行なう唱題行を体験できます。腹の底から心ゆくまで太鼓を叩いて声を出すと、活力が蘇ってくるそうです。
坐禅や写経、精進料理などの仏教体験ができる龍泉寺(臨済宗方広寺派)。当日は薬師寺住職と円座になって語り合う「仏事なんでも相談」を行います。「お布施や戒名など、菩提寺の住職には相談できないことも、何でもどうぞ」と、薬師寺住職の頼もしい言葉。
盛福寺(曹洞宗)の阪野住職は、仏教の日本の人に与える可能性について、力をこめて話されました。イベントでは坐禅やお経体験から、住職とのざっくばらんな語らい(坐禅から仏事相談までOK)などが行なわれます。
・在家編
インドのベンガル出身の横田スワルナリさんが、ヒンドゥーと仏教の関わりを話され、聖音「オーム」を、正しい呼吸と発音方法で披露してくれました。厳かに響き渡るスワルナリさんの声は、会場を浄化するような力をもっていました。
そして、最後に私がマインドフルネスの簡単な説明と、ワーク(プラユキさんの「夜のお話と瞑想の会」のオープニングでよく指導いただく、手を組み合わせて「今ここ」を感じる瞑想です)を体験していただきました。
準備はしていたのですが、あたふたとしてしまい(マインドフルレスですね (>_<))要点を伝えきれずにいましたが、池谷さんが的確にフォーローしてくださいました。ありがとうございます!
マインドフルネスブーム(?)を、仏教とふれ合うきっかけに
事前に臨済宗のお坊さんの参加が多いとお聞きしていたので、白隠禅師の言葉「正念工夫」や、会場がお茶の名産地の静岡県なので、マインドフルネスに通じる記述のある江戸時代の茶人・千宗旦の『禅茶録』など、いろいろと関連する話題を用意しました。
時間がおしていて、それらの話題はほとんど紹介できませんでしたが、準備作業をするなかで、実践(リラクゼーションやお茶の瞑想から、本格的な座行まであり)、教学、雑学と、窓口の広いマインドフルネスは、やり方しだいで多くの人に仏教に興味を持つきっかけとなりうることを感じました。
そして最近はマインドフルネスのみならず、西洋発でコンパッション(慈悲)や、共有経済(シェアリングエコノミー:お布施、縁起)など、仏教の主要な教えと通じるものが次々に注目されています。そういったものも、仏教と人々をつなぐ媒体になるでしょう。
個人的には、マインドフルネス・ブーム(?)を手がかりに仏教にふれる人が増え、ブッダの教えを通して、より多くの人が楽に生きられるようになればと願っています。
そのためにも私自身が、さらに実践と学びを深めていくとともに、現実問題として人前で普通に話せるようにならなくては、
……ですね。
(おまけ)
力みなく、自然に言葉が口から流れ出るように話す横田スワルナリさん。まるで自分の意思ではなく、インド悠久の歴史が彼女を通して話しているよう。
これぞ、ピュア・マインドフルネストーク!思わず聞き惚れてしましました。