「国際仏教者学術フォーム 知と心のゆくえ」(登壇:ケンポ・ツルティム・ロドゥ師、蓑輪顕量教授@東京大学)を聴講しました。
1月16日、初来日されたチベット仏教の高僧、ケンポ・ツルティム・ロドゥ師をおむかえして東京大学で行なわれた、「国際仏教者学術フォーラム 知と心のゆくえ 〜仏教瞑想論の視座から」を聴講しました。
三蔵仏教博士(ケンチェン)であり、現代チベット仏教を代表する仏教大学・ラロン五明仏教学院の主監督であるケンポ・ツルティム・ロドゥ師の、お話を聞ける貴重な機会。日本における仏教瞑想研究の第一人者である蓑輪顕量先生との対談も興味深いです。大きなホールは満員に近い人で賑わい、中国語圏の参加者も目立ちました。
日 時 2017年1月16日(月)18:00-20:30 (17:30開場)
第一部 蓑輪顕量教授(東京大学大学院教授)との対談
テーマ「新時代における学と行を問う」
第二部 講演会
テーマ「知と心の行方ー仏教瞑想論の視座から」
会 場 東京大学 伊藤国際学術研究センター 伊藤謝恩ホール(定員380名)
第一部 対談「新時代における学と行を問う」
第一部の対談は、現代社会は西洋の科学思想を反映して進歩してきたが、多くの人が行き詰りを感じている(心に本当の幸せ感がない)ことを共通の認識とし、蓑輪先生からの質問形式で進みました。
質問は「止観(と四念処の関係)」や、「日常の見ている(気づいている)状態で起きているのは、念か智か。また念や智は瞑想状態でないと起きなのか」「気づきと言葉の関係」などなど、ご自身の研究に連なるものが中心でした。テーラワーダ仏教とも、大乗仏教とも、チベット仏教(密教)の瞑想は実践体系が異なるためか、やや平行するところもありましたが、ケンポ・ツルティム・ロドゥ師の言葉の一部を紹介します。
止観は灯明に例えることがきます。炎は風にゆられていると、明るく燃え立つことができません。でも、風がなければ大きく燃え立つ。同じように風がなく心が落ち着いた状態が止観の止で、その輝きが大きく広がった状態が観です。
瞑想に熟達して、集中して念を保てるようになったら、そういう人は日常でも保つことができるでしょう。でも、本当の意味で念を保ちながら日常を過ごすのは,瞑想の達人以外は無理です。
そして最後の「チベット仏教では実践において、倫理をどのように考えているのでしょうか」といった質問には、不殺生、放生などの仏教規範を強く提案されている師を象徴するような回答をされました。
チベット仏教のみならず仏教徒として一番大切なことは、悪い行為はしない、よいことを成す。特に他の生き物の、身体、言葉、心に対して、なんら危害を加えないことです
仏教瞑想実践も行なう研究者として、真摯に質問をされる蓑輪先生、聴講者の心の幸せに役立つ話をしようとされるケンポ・ツルティム・ロドゥ師。異なるスタンスのお二人が、尊重し合って対話を重ねていく姿は印象的で、善きコミュニケーションのお手本のように感じました。
中休み、受付けにはケンポ・ツルティム・ロドゥ師の施本が置かれていました。
日本語はなく英語版と中国語版のみなので、英語版をありがたくいただきました。
第二部 講演「知と心の行方ー仏教瞑想論の視座から」
講義は「今日お話しするのは、心についてです」という言葉から始まりました。そもそも人間は物質的身体と精神で構成されていて、それぞれ必要としているものが違うが、私たちは心(精神)が必要とするものがわかっていないと指摘。さらに自分の心を律する訓練(瞑想)をすることの大切さを説かれました。
そして、アメリカの瞑想事情を、ハーバード大学の研究や、児童教育や医療従事者、さらにはGoogleなど大企業の導入などの実例を交えて紹介されました。
残念ながら時間の関係で、(チベット仏教の)瞑想の実践方法などは割愛されました。個人的には、日本でも情報が豊富になってきたアメリカの瞑想の取り組みよりも、本道のそちらに時間を費やしていただきたかったのですが……またのご来日の機会を、楽しみにいたしましょう。
※この記事はメモをもとに執筆したので、私の聞き違いや思い違いで、実際とは外れているところがあるかもしれません。お気づきの方は、どうぞご指摘ください。
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今回の来日では東京大学の講演会をかわきりに、以下のイベントが開催されるそうです。
① 東京大学講演会
・日 時:2017年1月16日(月)18:00-20:30 (17:30開場)
・第一部:蓑輪顕量教授との対談
(テーマ:新時代における学と行を問う )
・第二部:講演会
(テーマ:知と心の行方ー仏教瞑想論の視座から)
・会 場:東京大学 伊藤国際学術研究センター
伊藤謝恩ホール(赤門すぐ隣)
(定員380名)
・場 所:東京都文京区本郷7‐3‐1
・会場へのアクセス:
・申込みメール:khenpo2017@gmail.com
※当日参加も受付ますが、人数把握のため、極力、事前にメールでお申込みください。定員になり次第、入場をお断りする場合がございます。
② 大正大学講演会
・日 時:2017年1月20日(金)18:00~20:00(17:30開場)
・テーマ:「チベットの『般若心経』」
・会 場:大正大学礼拝堂(定員360名)
・場 所:東京都豊島区西巣鴨3-20-1
・申込みメール:khenpo2017@gmail.com
※当日参加も受付けますが、人数把握のため、極力、事前にメールでお申込みください。定員になり次第、入場をお断りする場合がございます。
③ 京都一般講演会
・日 時:2017年1月22日(日)13:30~16:30 (13:00開場)
・テーマ:「現代チベット仏教を知る」および瞑想読経体験
・会 場:京都・大谷ホール(東本願寺しんらん交流館2F)
(定員150名)
・会場へのアクセス:京都駅(鳥丸中央出口)徒歩7分
・申込みメール:fukui@djlabo.jp
※先着順に申込みを受付ます。定員になり次第受付けを終了させていただきます。
④ 京都大学講演会
・日 時:2017年1月24日(火)17:00~19:30(16:30開場)
・テーマ:環境問題と仏教―チベットにおける環境問題と仏教寺院の取組み
国際交流ホールⅢ(定員100名)
・申込みメール:kokoro-event@mail2.adm.Kyoto-u.ac.jp
※先着順に申込みを受付ます。定員になり次第受付けを終了させていただきます