コマメディア 〜史上最弱の仏弟子コマメ〜

雑誌、書籍で活動するライター森竹ひろこ(コマメ)が、仏教、瞑想、マインドフルネス関連の話題を紹介。……最弱なのでおてやわらかに!

【報告】 意識高い系ビジネスパーソン、マインドフルネスの本流を体験する。 グロービス経営大学院で「ビジネスに活かすマインドフルネス」が開催されました。

 

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1月22日(金)、グロービス経営大学院の「メンタルヘルス研究会」が、マインドフルネスの第一人者である禅僧ティク・ナット・ハンの著書を多数翻訳されている島田啓介先生を講師に招き、講演会&ワークショップ「ビジネスに活かすマインドフルネス」が開催されました。

 

グロービス経営大学院は、MBA経営学修士)に特化した専門職大学院。ほとんどの学生が仕事と両立しながら学ぶ社会人です。

「メンタルへルス研究会」は大学公認クラブ。リーダーの視点から、いかに個人や組織が本来持っている力を発揮できるかをテーマに、OB、現役学生がともに活動しています。

今回の講演会は、幹事の迫加奈さんの「戦略や成果一辺倒でない、これまでの企業の常識とは異なる視点を、次世代の経営を担っていくMBA生やOBに提供できれば」といった思いが発端になり、実現したそうです。

 

 

・「ビジネスに活かすマインドフルネス」

会場には会社帰りのスーツやオフィッスカジュアル姿の参加者が30人程。20代後半から40代前半が中心で、男女比は7対3ほどでしょうか。ほとんどの人がマインドフルネスのワークショップは未経験だそう。注目のマインドフルネスをしっかり学ぼうと、季節は冬ですが、会場には夏のような熱気が感じられました。

 

プログラムは仕事モードから切り替えるため、「今ここ」の体と心にもどるワークから始まりました。体を軽くゆらしてほぐして、顔の緊張をゆるめ、発声とともに長〜い呼吸を試みる。さらに、部屋全体を包んでいくようにイメージして、微笑みながらゆったりとした呼吸をしました。

 

 

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・講義

講義は、まずはマインドフルネスの概念を、「今ここに心を置くこと」と端的に説明。さらに、スズメ蜂に襲われそうになった時に、マインドフルネスになることで命の危機を切り抜けられた体験談や、昨年の流行語「安心してください!」のマインドフルネス的な解釈などを交えながら、和やかに進められました。

 

先生のお話は親しみやすい語り口でありながら、ティク・ナット・ハンのマインドフルネスを長年学び、実践を重ねてきた上での確信に基づいた、深みと説得力のある内容でした。参加者はしっかりと耳をかたむけ、熱心にメモを取る人も多かったです。特に参加者が反応された言葉をいくつか紹介します。

 

「私たちは、習気(じっけ)という習慣のエネルギーに操られているロボットです」

 

「『我』は自分自身ではありません。『我』とは自分の不幸を願うように条件付けされたプログラムです」

 

「(マインドフルネスであれば)世間という共同幻想から抜け出て、今ここの現実を、瞬間ごとに新たに生きることができます」

 

特に、マインドフルネスであることで心のクセや感情に流されず、自分で選択して行動を選べるというということが、多くの参加者の関心を引いたようです。

 

また、島田先生はマンドフルネスを始めるポイントとして、以下のようなアドバイスをされました。

「新しいことを学び始めると、一生懸命勉強や訓練をします。でもそれは、できない自分を責めるという罠にかかりやすいことです。ですから、マインドフルネスに限らずですが、なにかを学んで身につける時は、最初に自分をゆるすということを、頭に入れてください」

マインドフルネスの実践において、「ゆるす」も大切なキーワードのようですね。

 

 

・水の瞑想

マインドフルネスの実践では、「水の瞑想」が行われました。

同じテーブルの4人で、1本のミネラルウォーターのペットボトルをシェアします。そして実践中は言葉を発しない、「聖なる沈黙」を守ります。

まず、一人一人が自分の紙コップに水を注ぎますが、言葉で順番を決めたり、譲り合うことはしないで、テーブル全体を感じながら無言で作業を進めていきます。

この時、自分がどんなことを感じたかに気づくのも大切です。ボトルを取ろうかどうかためらう心に気づく、取ろうとしたら先に手を出した人がいて「チェッ」とか、「イラッ」と感じたら、その心にも気づく。

ボトルの蓋を開けて水を注ぐのも、その時の感触、重さ、硬さ、冷たさなどに気づきながら丁寧に行います。

 

テーブルの全員がコップに注いだら、水を口にふくみます。しばらく口中での感覚を味わい、そうしてやっと水を飲み込みます。

この時、自分では意図できない、喉が自然に行う嚥下反応にも気づくことでしょう。嚥下反応は体が自然に行ってくれるもの。私たちは一口の水さえ、体がそうやって助けてくれるからこそ飲めることにも気づきます。

 

さらに、飲んだ後の呼吸にも気づきを入れます。そうすると、「今ここ」に戻り、ゆっくり水を飲むことで、呼吸も穏やかになっていることに気づくのではないでしょうか。

このように島田先生は、マインドフルネスを日常生活に活かす例を、実践を通して示しました。

「水を一口マインドフルに飲むことが、忙しい時、心があせる時……日常いつでも、心を今ここに落ち着かせる、助けとなってくれます」

 

 

実践中は静かに、ゆったりと時間が流れるようでした。参加者の顔も意識したスマイルではなく、自然に口角がほぐれて、ありのままの微笑みに変わってきました。

 

 

・終了後

終了後、何人かの参加者に感想をお聞きしました。

 

「心を整えるために坐禅をしたことがあるが、ただ坐れと言われ、効果があまり感じられなかったです。それに対して、マインドフルネスは方法や目的がはっきりしているので、効果も実感しやすかったですね」

「ゆっくり水を飲むのは、仕事中の気持ちの切り替えに使えると思いました」

 

 グロービス経営大学院に通う学生さんは、今の自分に「何か足りないものがある」と感じている方も多いとお聞きしました。

マインドフルネスは、ビジネスの世界では「生産性向上のツール」として捉えられることも増えてきたようですが、私はまずは「人間性をとり戻す」ことにこそ、その本領があると実感しています。数時間の講座でしたが、目標を掲げてストイックに働く彼らが、それでも足りないと感じている「何か」の片鱗に、出会うことができたならいいですね。

 

 

(おまけ)

講師の島田先生は、完全にアウェイともいえるここでもマイペース。取材にきた旧知の編集者と挨拶がてらにハグメディテーションをして(男同士で!)、独特な世界を作り上げていました……。

f:id:komamemet:20160201114657p:plain ←初めてのはてなブログ付属機能でのお絵描き。あまりにもアレな仕上がりなので、控えめに。(島田先生、ごめんなさい)