コマメディア 〜史上最弱の仏弟子コマメ〜

雑誌、書籍で活動するライター森竹ひろこ(コマメ)が、仏教、瞑想、マインドフルネス関連の話題を紹介。……最弱なのでおてやわらかに!

【報告】シンポジウム「仏教と脳科学とマインドフルネス」2

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【報告】シンポジウム、「仏教と脳科学とマインドフルネス」1 - コマメディア 〜史上最弱の仏弟子コマメ〜のつづきです

 

基調講演は、佐久間秀典先生による「仏教・脳科学・マインドフルネスのコラボレーション」。

唯識を専門とされる佐久間先生は、まずは概念と言葉、解釈などをキーワードに、仏教と自然科学を比較。

そして、仏教の悟りや禅定体験など言語表現できないものを伝えるために、あえて言語概念を使って記録(データ化)したものが経典ではないかと指摘。それならば、禅定状態で脳波計MRIで得られたデータをもとに、脳がどういう状態の時に、経典ではどう言語化されているのかを擦り合わせができないかと、興味深い提案をされました。

さらに、マインドフルネスは科学的データに裏付けされているが、もともと仏教由来なので、経典に記録された豊富なデータも加えないのは、多くの財産を無駄にするのではいかと指摘。仏教色をあえて排したマインドフルネスに、もう一度経典から読み解く。しかも脳科学を加味しながら。これは、おもしろい試みになりそうです!

 

次の有田秀穂先生(東邦大学名誉教授)の講演は、「脳科学と仏教」と題して、セロトニン坐禅の関係を中心に解説されました。心身の安定に深くかかわる神経伝達物質セロトニンは、坐禅丹田呼吸や、読経でも脳内の分泌が増えるそうです。さらに、意識的なリズム運動でも増えるので、プラユキ先生の手動瞑想(チャルーン・サティ)も当てはまりますね。

  

臨床にマインドフルネスを取り入れている貝谷久宣先生(日本マインドフルネス学会理事/医療法人和楽会理事)の講義「マインドフルネスの臨床から診えたもの」。まず、貝谷先生は、うつは病院に行くほどでない軽いものならともかく、(本格的な)うつはマンドフルネスだけでは治らないと断言された。

先生のクリニックではうつには薬と認知行動療法で対応して、補助的にマインドフルネスを指導されているそうだ。マインドフルネスは疾患に特異的に作用するのではなく、今ここに集中することで、貪瞋痴(煩悩)が活発になるのを弱める方向に持っていくための効果が期待されている。実際、反復思考もなくなるため考え方が変わり、腹も立ちにくくなるそうだ。

貝谷先生は、実はうつに一番いいのは、自分や周りの人、さらに範囲を広げて生きとし生きるものや、嫌いな人も幸せであることを祈る「慈悲の瞑想」だと言われる。「慈悲の瞑想」をすることで、共感や慈悲と関連する前頭葉も活性化するそうだ。

つまりマインドフルネスや瞑想は人格涵養作用があるため、心の病気の治療という狭い範囲に収まるものではないようだ。最後に、貝谷先生は「将来の宗教はマインドフルネスです」と高らかに宣言されて講義を締められた。

 

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