コマメディア 〜史上最弱の仏弟子コマメ〜

仏教瞑想実践者のライター・森竹ひろこ(コマメ)が、仏教&瞑想関連の話題を広く紹介。なにかがきっかけで、仏教とご縁がつながると嬉しいです。……最弱なのでおてやわらかに!

シンポジウム「マインドフルネス瞑想と良心の育成」(主催:同志社大学良心学研究センター)を聴講しました。

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準備中。その後、会場は100人近い聴講者でうまり、マインドフルネスの注目の高さがうかがえました。

 

2016年9月27日、同志社大学の東京オフィスで開催されたシンポジウム「マインドフルネス瞑想と良心の育成」を聴講しました。

 

気づき(マインドフルネス)がもたらす智恵と慈悲は、仏教の支えとなるものです。

キリスト教にとって慈悲に対応するのが愛。信仰と良心は相互関係にあるとされ、愛で形成された良心をもつように説かれています。

 それでは、キリスト教主義教育を根幹におく同志社大学で行なわれるシンポジウムでは、マインドフルネスと良心はどのような脈絡で語られるのでしょうか。そんな関心をもって参加しました。

 

公開シンポジウム

「マインドフルネス瞑想と良心の育成 ——宗教学・脳科学・心理学からの提言」

  

日時  2016年9月27日

会場  同志社大学 東京オフィス

参加費 −5円!(無料のうえに、5円玉が配られました)

 

講演

・「良心はどこに宿るのか ——二元論的価値判断の保留と身体性への気づき」

  小原克博(神学部教授/良心学研究センター長)

 

・「瞑想の脳科学 ——マインドフルネスはどこから来てどこへ行くのか」

  貫名伸行(脳科学研究科教授)

 

・「マインドフルネス瞑想・ブームにマインドフルネスになる ——研究者の「良心」に基づく警鐘」

  武藤崇(心理学部教授/実証に基づく心理・社会的トリートメント(WEST) 研究センター長)

 

主催同志社大学 良心学研究センター 

   http://ryoshin.doshisha.ac.jp/jp/

共催同志社大学 実証に基づく心理・社会的トリートメント(WEST)研究センター     http://rc-west-doshisha.jp

 

 

小原克博先生の講演

 同志社大学良心学研究センター長の小原先生は、まずは同志社創設者の新島襄の良心と、西洋社会における良心について解説。

そもそも英語の良心conscience のもとになったラテン語 conscientia は、 con(共に)+ scire(知る)でできた言葉であり、良いとか悪いとかの概念はないそうです。

これは、良し悪しの価値判断をしないでありのままに観るという、マインドフルネスの定義とも通じるます。

「私たちは二元論的な判断を保留して偏見から離れることが大切ではないか」と小原先生は問いかけました。

 

さらに、ITの発達により身体性がどんどん薄れていくことを指摘。

 

最後に、マインドフルネスからコンシエンスフルネス(良心の充満)へといたる道を模索することを提唱。「良心が心身に充満すると溢れ出て、他者にも向けていける道があるのではと、私は思っています」と、穏やかに語りかけました。

 

 

 

貫名伸行先生の講演

貫名伸行先生は、かつて龍雲院・白山道場で小池心叟老師から坐禅指導を受けていた経験があり、個人的には瞑想が好きという立場で話をされました。

 

複雑な道路事情のロンドンのタクシードライバーの脳の構造や、修行をつんだチベット仏教僧の脳波、さらに最新の脳の研究で瞑想が脳にダイレクトに影響を与えていることなどを、データや図とともに解説。

 

また、講義を進めるなかで、

・現在の科学はゲノム科学と脳科学に分かれるが、全ては遺伝子で決定されるとするゲノム科学は一神教的、対して神経可塑性にもとづく脳科学はそうではない

・選択肢が2つしかないと思うところから二元対立的な状況になるが、本当は禅問答のようにまったく違う選択肢もある

などなど、興味深い指摘がありました。

 

 

武藤崇先生の講演

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5円玉をじっくり見たこと、ありますか?

 

武藤崇先生は、2005年に出版されたマインドフルネス&アクセプタンス―認知行動療法の新次元」(ブレーン出版)の共同翻訳者として、医療の領域では日本で初めてマインドフルネスという言葉を紹介されたそうです。

 

まずは、エクササイズから始まりました。

 

・「ごえん」を感じるエクササイズ

「マインドフルネスとは、立ち止まっていつもと違う感じ方をしてみましょうということです」と武藤先生。

5円玉が全員に配られ、普段は気にかけない5円玉ですが、手の上にのせてわずかな重さを感じ、匂いを嗅ぎ、じっくり見ます。(5円玉は、お土産として持ち帰れました)

 

・間違い探し

次に2つのそっくりな画像が映し出され、間違いを1つ探します。

始めの方では、素直に絵の中に違いがありましたが、最後にはそれ以外のところに間違いが!このエクササイズで、自分はいろんなところを注視できているか、オープンに見ているかがわかるそうです。

 

武藤先生によると、私たちは生きている限りものの見方が偏りをもってしまうが、そこから抜け出すのがマインドフルネス瞑想だそう。

さらに、そのようなバイアス(偏見)から自由になるための参考書として、シャーロック・ホームズの思考術早川書房)を紹介されました。

 

・講義

講義では、とあるトクホ飲料のCMを流し、さらに効果を調べたデータを提示して、CMはウソではないがかなり誇張されていることを解説。「情報を鵜呑みにしないこともマインドフルネスです」と力を込めます。

 

さらにマインドフルネスに関する、学術的な研究に基づいたデータを見せながら、興味深い話題が続きました。

 

・マインドフルネスはACT(アクセプタント&コミットメントセラピー)と合わせてはじめて効果があるもの。単独では効果が半減してしまう。

 

・マインドフルネス・ストレス低減法はセラピーとして効果があるが、そこからマインドフルネス瞑想だけを取り出して、同じような効果をうたっているものが目に付く。この二つを一緒にしない。

 

・2.2年以上続けている人は、創造性が少し上がっていた。(即効性があるわけでなく)地道に続けて習慣化しないと成果は上がらない。高いお金をかけて、やるだけのものだろうか?

 

科学は「再現性」が基本と強調される武藤先生。

「こんなことを言ったら刺されるかもしれません」と言いながらも、研究者の「良心」としてマスコミには流れない(不都合な?)情報を次々に提示し、現在のマインドフルネス・ブームに警鐘を鳴らします。

 

私も、もっと書きたいのですが、先生が刺されないように、このぐらいにしておきましょう。

 

全体ディスカッション

全体ディスカッションでは、やはり参加者からは武藤先生に向けた意見が多かったようです。

 「ビジネスの世界でも実際に効果が実感できたから、取り入れられているのではないのでしょうか」

「会議の前に参加者で瞑想をしていますが、それが会議によい影響を与えています」

「マスコミはマインドフルネスのいいところだけで、ネガティブなところを紹介していないのは疑問です」

 

個人的には、「良心とマインドフルネスの関係が、いまいちわからなかった」といった質問に対する小原先生の言葉が、心に残りました。

 

「見方にバイアスがかかりすぎると、好ましい集団だ、好ましくない集団だと差別が生まれます。私たちは、そういった敵味方の二元論を乗り越えなくてはいけない。差別がだめなのではなくて、我々は普通にしていると差別的であるということに気づく、そのようにマインドフルネスであることが、良心につながっていくのではないかと思います」

 

今回のシンポジウムでは、どの先生も二元論やバイアス(偏見)を乗り越えることの大切さに触れ、気づき(マインドフルネス)がその助けとなることを指摘されていました。

仏教でも二元論は乗り越えるものとされていて、そのための修練のひとつがマインドフルネスです。

現代の日本では、敵か味方か、得か損か、正しいか間違っているか、そういった二元論に縛られて、生きづらさを感じている人が増えているように見受けられます。

学術的なデータはまだないかもしれませんが、マインドフルネスが少しでもそういった人たちの辛さを低減する助けとなることを、私も仏教実践者の「良心」から願います。

 

 

(おまけ)

研究者の「良心」にのっとり、ラディカルな講義をされた武藤先生は、11月25日(金)に、同じ同志社大学の東京オフィスで単独講座を行います。

シンポジウム終了後、パンフレットをもらう人で受付けが混雑したことからも、今回の講義のインパクトが伝わりました。私も時間の都合がつけば、ぜひ聴講したいです。

 

同志社講座2016 秋学期

www.doshisha.ac.jp

 

 

※今回は講義を録音をはしていません。メモだけで書いたため、いつもに増して聞き違いや、思い違いがあるかもしれません。お気づきの方は、どうぞご指摘ください。