開始前に、スタジオで撮影。なにげに、後に黒ネコが。
2016年5月20日(金)、タイで出家された日本人僧プラユキ・ナラテボーさんをお招きして、「夜の瞑想会」を開催しました。
今回の会場は、品川区西小山の立会川緑道沿いに建つ「スタジオ・プラスえー」。落ち着いた環境にあるヨガスタジオであることを生かして、瞑想に特化したプログラムをお願いしました。
瞑想会スタート
仕事帰りの人も多い、金曜夜の瞑想会。まずは心を鎮めてお仕事モードから瞑想モードにするため、2つのサマタ瞑想から始まりました。
サマタ瞑想(止瞑瞑想:集中系)
・指を組む瞑想
祈るように指を組んで、組み合わせた手の感覚を感じます。手と手が触れ合う感覚、手の温かさ、ドクドクと波打つ血管……感覚に集中することで、普段は気づかないでいた様々な感覚が立ち上がってきます。さらに指の一本一本に意識を集中して、その感覚を味わいます。
・プットー瞑想
タイで広く行われている呼吸を使ったサマタ瞑想。タイではブッダのことをプットーと発音するそうです。
「プッ」と心の中で唱えながら息を吸い、「トー」と唱えながら息を吐きます。呼吸や身体の観察は特にしないで、「プットー」という言葉に集中して心を鎮めていきます。
この瞑想は修行の場では、集中して繰り返し唱えることで三昧に入る手段としても、行われているそうです。
2つのサマタ瞑想で参加者の心が鎮まっていくのに合わせるように、会場もシンと深まっていくようでした。参加者の表情からも、会場に到着した時の緊張が抜けているのを感じます。
ヴィパッサナー瞑想(観瞑想:気づき、洞察系)
さらに実践は、メインのヴィパッサナー瞑想へと進みます。
・手動瞑想(チャルーン・サティー)
手動瞑想は体操のように、手を決まった順番に動かして行う瞑想です。もともとラオスで行われた瞑想を、20世紀の大長老、故ルアンポー・カムキアン師が改良されたもので、現在ではタイをはじめ、アメリカや中国など約150カ所の寺院で行われています。
リズミカルに手を動かし、一動作ごとに「今ここ」にある手の位置を意識的に確認することで、心の覚醒力を養っていきます。ひと動作、ひと動作に、「パッ」「パッ」と、自覚的に気づきを入れていくのがポイントです。考えが浮かんできても雑念や妄想と決めつけないで、「オーケー」とあるがままに受けとめて、また手の動きに戻ります。
さらに詳しく手動瞑想を知りたい方は、以下の2つのサイトをご覧ください。
プラユキさんが手動瞑想の指導をされる動画が、公式サポートサイトで紹介されています。 →「よき縁ネット」師のご紹介
プラユキさんの書籍や、資料のイラストおなじみのデザイナーのざぼんさんが、イラストやアニメを使って、解りやすく解説されています。 →ブログ「気づきの瞑想」
・歩く瞑想
歩く瞑想ではプラユキさんは輪の中に入り、インストラクションを入れながら共に歩かれました。
スタジオで輪になって、普段より若干ゆっくりした早さで歩きます。これも手動瞑想と同じで、一歩一歩に自覚的に気づきを入れていきます。言葉のラベリングは不要で、細かい感覚にはこだわらず、ダイレクトに気づいていきます。気づきを持って歩くことで、次の一歩をどのように歩くかを自由に選択できるようになります。
こうして、「今ここ」の手や足の動きに気づけるようになると、次第に心の動きにも気づいていけるようになるそうです。今、何を感じたか、何を考えたかに気づければ、無自覚に流されて怒ったり、貪ったりしないで、次のアクションを意識的に選択できるようになります。手動瞑想や歩く瞑想は、心のクセから自由になるための練習でもあるのです。
・呼吸瞑想
姿勢を楽にして、起こってくる自然な呼吸を、一呼吸、一呼吸、ただただ気づいていきます。
次に、息と連動している、お腹の動きをみます。
さらに、頭のてっぺんから、足の先までスキャンするように、体の感覚を感じて取っていきます。
手動瞑想と歩く瞑想が近代的なモダン・ヴィパッサナー瞑想だとすると、この呼吸瞑想は、パーリ経典の「四念処経」や「出入息念経」に基づいた伝統的なやり方です。でも、どちらも「今ここ」で起こっている現象をありのままに見ていくことで、包括的な智恵を開発していくという目指すところは同じです。
碇のサマタ、マークのヴィパッサナー
今回は瞑想に特化したことで、時間をかけて深く取り組むことができました。
なかでも呼吸を使った瞑想は、サマタとヴィパッサナーの両方のアプローチで行ったことで、その違いがより鮮明にわかるように。
プラユキさんは、その違いをこのように説明されました。
サマタ瞑想
・能動的に集中している
・コンセントレーション
・起こっているものを価値判断せずに、きちんと観察している
個人的には、呼吸という瞑想の対象を、サマタは心を落ち着かせるための碇(イカリ)として使っているのに対して、ヴィパッサナー瞑想は「今ここ」に気づくためのマークとしているように感じます。
とはいえ、この2つの瞑想は完全に別のものではなくて、集中するには対象に対する気づきが必要ですし、気づくにも対象にある程度の集中がないと浅く雑になります。そういった意味では伝統的に、サマタ瞑想で深い瞑想状態(三昧)を作ってからヴィパッサナー瞑想を行うのも、理にかなっているのでしょう。今回も、最初にサマタ瞑想をしてからヴィパッサナー瞑想を行うことで、より安定した気づきが可能になりました。
瞑想を2時間じっくり行い、その後1時間ほど、その場でプラユキさんを囲んで懇親会が和やかに行なわれました。瞑想のやり方や、日常での気づきの保ち方などの質問が出て、プラユキさんは一つ一つに笑顔で丁寧に答えられていました。
嬉しいことに帰宅後、Twitterを見ると参加者の何人もが、「すごくリラックスしました(^O^)/」、「体はここ最近の仕事で疲れているはずなのに、リラックスできて、爽快な気分で帰れそう。精神的な疲れも減っています」といった感想をツイートされていました。
慌ただしい日常を送る現代人。そこからちょっと距離を置いて「今ここ」に戻り、気づきを育む時間を必要とされている人は、きっと多いことでしょう。
また瞑想実践者にとっては、今回のように瞑想の土台に戻って自分の修練を振り返り、必要に応じて適切なアドバイスを受けられる時間を持つことは大切です。
瞑想を熟知され、それを日常に即した柔らかい言葉で伝えてくださるプラユキさん。どちらのニーズにも答えられるその存在は、ありがたいものだなあと、しみじみ感じました。