コマメディア 〜史上最弱の仏弟子コマメ〜

雑誌、書籍で活動するライター森竹ひろこ(コマメ)が、仏教、瞑想、マインドフルネス関連の話題を紹介。……最弱なのでおてやわらかに!

【報告】 作家・田口ランディさんの仏教合宿に参加しました。「私なくして、私である」を体感しよう!

 

f:id:komamemet:20151226150949j:plain

 読書会のテキストの2冊。霧の向こうは大室山です。 

 

 作家・田口ランディさんが主宰する仏教読書会が、2013年の9月から、ほぼ毎月開催されています。1年目は『大乗起信論』を、2年目は禅への造詣も深い哲学者・上田閑照氏の『私とは何か』を1年かけてじっくり読み、区切りの秋ごろには集大成的な合宿が行われています。

 「いろんな瞑想やワークをして、めちゃくちゃ楽しかった」、昨年の合宿参加者から感想を聞いて、私は興味シンシン。さっそく今年は、オブザーバーながら参加させていただきました。合宿の参加者は15名ほど。仏教読書会のメンバーが中心ですが、ランディさんの主催される他の勉強会のメンバーもいて、オープンな雰囲気です。

 

 合宿会場は、伊豆高原の高台に位置する「桜美林大学 伊豆高原クラブ」。晴れていれば、隣接する大室山を見上げ、相模湾を見下ろす絶景が楽しめますが、あいにくの雨模様。でも、ランディさんは「伊豆は雨がよく似合う」と言われます。

 温暖な伊豆の風景は、雨空にくすんでいても、どこか明るさを感じます。また、霧のベールで環境が閉ざされたことで、結果的に合宿中は内面により深く入りこむことができたようです。

 

            *     *     *

 

 読書会では上田氏の論じる世界の二重性「私とは、私ならずして、私である」が、なかなか理解しきれなかったそうです。「私のまんまで、私をなくすって、どういうこと?」、「私をなくして、どこへ行くのよ、私は?」……

 

 そこで、合宿は「私とは、私ならずして、私である」を実感することがテーマの一つに。プログラムは座学をこえて、サイコドラマ、リモートビューイング、倍音正明ワークなどの心身を使うワークがメインとなり、ランディさんのファシリテーションのもとで行われました。

 

 サイコドラマは過去の自分や、それを取り巻く他者を即興的に演じます。それは内観にも通じ、自己を客観的に見つめ、再発見をする助けとなりました。

 

 リモートビューイング(遠隔透視)はサイキックなイメージが強いため、仏教と相反するのではないかと、少々疑問にも思えました。それに対してランディさんは、「仏教はありのままに見ることを大切とするけれど、私たちは観察するということを、ないがしろにしているのではないでしょうか」と投げかけます。そして、最初に透視の対象をじっくりと観察して視覚化するリモートビューイングは、現代人に合ったありのままに観察するトレーニングの一つだと説明されました。

 

 倍音声明ワークはチベットやモンゴルの発声方法をもとに、英国人セラピストが創造したワークです。日本には、故・吉福伸逸氏により1980年代に紹介されました。

 

 まずは、u、o、a、e、iと母音を順に発声して、それぞれの声に対応する体の部分(チャクラ)に響かせます。最初はバラバラだった参加者の声が、だんだん自分の声が識別できなくなるほど一つになり、次第に大きなウェーブとなっていきました。それが空間を満たし、体の内から共鳴するようになり、やがて自分と周りとの境界までが薄れていく……自分が粗い物体でなく、ダイナミックにして細やかな波の一部であるような感覚を覚えました。

 

 倍音声明ワークは精神的な浄化や、体内マッサージの効果が言われていますが、「私は波、声も波」ということを体感するワークでもあるそうです。これと同じような現象は仏教瞑想の修行のプロセスでも体験できますが、一般の人には現実的ではありませんね。でもこのワークでは、誰もがそれを体験できるそうです。確かに終了後のシェアでは、多くの人がそれに準ずる体験を口にされていました。

 

 ランディさんはこの体験は無我や空にも通じ、さらに「私なくして、私である」にも通じる状態ではないかと問われました。おお、まさに合宿のテーマに着地しましたね! さらに、「このような宇宙の在り方をもう一度、私たちの中に取り戻す。それは南無阿弥陀仏と同じで、宗教は最終的にここを目指そうとしているのではないかと思います」と締められました。

 

 ここまで読まれると、とても真面目な合宿のように思えるかもしれませんが、会場には常に和やか空気が流れ、笑いの絶えない合宿でした(もちろん、行っていることは大真面目ですが)。また個人的には、ストレートな仏法からピョンと一歩飛び出たことで、仏教や瞑想に対する新たな視点を得ることもできました。振り返れば、とても密度が濃く、また楽しい1泊2日になりました。

 

※合宿は2015年11月14日〜15日に行われました。仏教読書会は合宿を区切りに一年ほど休会の予定だそうです。さらにランディさんも、メンバーもパワーアップして再開されることでしょう。

 

→ 森竹は12月28日から1月3日まで瞑想合宿に参加するため、PCを操作できる環境から離れます。本文の間違い、訂正箇所などありましたら27日までにお伝えいただくと今年中に対応できます。それ以降にご連絡いただいた場合、4日以降に対応させていただきます。